映画

上映のお知らせ 

知ってる人はとっくにご存じでしょうし、興味のない人には意味のないお知らせですが、念のため。 神保町シアターでの特集「小津安二郎の世界」(11月20日〜12月29日)において、現存するすべての劇映画36本が連続上映されます!詳しくはこちらをどうぞ。特に…

スクリーンで見た映画(9/29〜10/20) 

せめて劇場で見た映画については感想を書き留めておきたいのだけれど、そのたびにブログを更新する気力も体力もないので、以前やったように(id:hidexi:20080216)見た順番にまとめて備忘録としておきます。 『喜劇 特出しヒモ天国』(森崎東、1975)を何度…

いっしょにいるカモ 

『現代思想』9月号を持って「せせらぎ公園」まで(例によって)自転車で行ってきた。 対立する様々な勢力が拮抗している場合でも、民主主義は〈多〉ではなく〈一〉を前提とする。対立する複数の勢力は、最終的には(投票を含む)議決によって「一つの」決定…

スミスのアニキ 

RWプレセミナーとシンポジウムがダイ成功裏に終わったのも束の間、27日(月)朝に投函しなければならない(かなり気を遣う)書類を完成させるべく、日曜の夜は徹夜。徹夜になってしまったのは、『アニキ・ボボ』(マヌエル・ド・オリヴェイラ、1942)を観る…

モヒートばか 

昨日は、『カイエ・デュ・シネマ』誌出身のパスカル・ボニゼール監督作品ということで気になっていた『華麗なるアリバイ』を観るために炎暑のなかを渋谷へ。にしても暑い。Bunkamuraル・シネマにたどり着くまで干からびてしまいそうだったので、とりあえず涼…

なんだかな 

先週の金曜日、『コロンブス 永遠の海』(マノエル・ド・オリヴェイラ、2007)を上映最終日に観る。ネット上に浮かぶ小島のあちこちでこの映画に対する称賛の美学的花火が打ち上げられている様子だけど、いや私だってオリヴェイラの新作ときけば何とか都合を…

ようやく東京もシルビアのいる街に 

ついにというかやっとというか、『シルビアのいる街で』(ホセ・ルイス・ゲリン、2007)が7月下旬より渋谷シアター・イメージフォーラムでロードショーされます。2008年10月の東京国際映画祭で『シルビア』に出会ってから、この日をどれだけ待ち望んでいたこ…

TOCHKA  

8日夜、ユーロスペースで『TOCHKA』(松村浩行、2008)を観る。 この異形の傑作を観て思い出したのは以下の一節。「書く」を「撮る」に入れ替えればそのままこの映画に当てはまるような気がする。 自分が知らないこと、あるいはよくは知らないことについて書…

『きみがぼくを見つけた日』(ロベルト・シュベンケ,2009)

きみがぼくを見つけた日 [DVD]出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ発売日: 2010/03/10メディア: DVD購入: 1人 クリック: 43回この商品を含むブログ (29件) を見る広告されているようなベタベタな恋愛ドラマというよりも、あえてジャンルに分類するな…

やはり

『とどまるか なくなるか』(瀬田なつき、2002)@ユーロスペース 『彼方からの手紙』、『むすめごころ』に先立つこの作品も「少女」が主人公の映画なのだけれど、初めてこれを観て、瀬田なつきは少女を主人公にしなくても映画を撮れる監督なのだということ…

神的(非)暴力 

『グラン・トリノ』(クリント・イーストウッド、2008)を今日見てきて、『チェンジリング』のときと同様、いやそれ以上に、深く倫理的な何かに触れたという感触に捉えられ、ただ惚けている。その「感触」は、例のシーンだけにかかわるものではないし、振り…

「ショット/切り返しショット」のオルタナティヴ 

話題としてはやや古くなるが、ショット/切り返しショットをめぐる刺激的な批評文が奇しくも連続して発表された。廣瀬純「ショット/切り返しショット、ゴダール/レヴィナス」(『nobody』29 2009: 102-119)と、山城むつみ「ドストエフスキー『未成年』の切り…

まつりのあと 

「桃まつり presents kiss!」@ユーロスペースで瀬田なつき『あとのまつり』を見る。スクリーンでの瀬田初体験だったが、いまひとつのりきれず。異なる時空間をつないだり並置したりする感覚はやはり独特のものだし、ヒロインの少女の走りっぷりや夕日に染ま…

angelina, angelina!

公開中には映画館で見ることはできないだろうと諦めていた『チェンジリング』(クリント・イーストウッド、2008)を、昨日奇跡的にできた空き時間に見た。圧倒されて未だ何も言えない状態なので、この映画にふさわしいベンヤミンの言葉を。「希望なき人びと…

『彼方からの手紙』

以下、id:shintak さんへの応答です。 吉永が2回コンビニにいって2回とも会計せずに買い物カゴを置いて店を出てしまうところ、引っかかっていたのですが、「未来と未来性」という視点で見ると「日常性の脱臼」と読めるわけですね。なるほど。 この作品、さら…

彼方からの言語 

細見和之『ベンヤミン「言語一般および人間の言語について」を読む』を読む。ベンヤミンのこの「難解な」論考を徹底的にパラフレーズするという地味な本だが、今後ベンヤミンを学び論じる人々にとっての必読文献となりそうだ。単なる「解説本」にとどまるこ…

官能の帝国

正月早々、締め切りのプレッシャーと前未来的喪失感に耐えかね、元気ロケッツの「Heavenly Star」を聴いても元気になった気がしないので、やむなく(ホントにやむなく、です)シネマヴェーラへ。『壇の浦夜枕合戦記』(神代辰巳、1977)と『江戸川乱歩猟奇館…

ゾンビの勝ち

『ダークナイト』(クリストファー・ノーラン、2008)を目黒シネマで。う〜む。ヒース・レジャー演じるジョーカーは、何らかの利益を得るための悪ではなく、パトローギッシュな動機を一切含まない根元悪(悪のための悪)を体現する人物だとするなら、そうし…

音−映像の民主主義

ブログを更新している場合ではないのだが、今日の午前中に見た『シルビアのいる街で』(ホセ・ルイス・ゲリン、2007)があまりにも素晴らしかったので、「今日これを見たのだ」という事実だけここに記録しておきたい。この映画をかなり無理して見に行ったわ…

黒沢清『トウキョウソナタ』(2008年) 

冒頭、窓から吹き込んでくる風がカーテンを揺らしている。『トウキョウソナタ』の風は、『ドレミファ娘の血は騒ぐ』(1985年)のルノワール的淫風でもなく、『勝手にしやがれ!! 英雄計画』(1996年)のエンディングにおける異世界からの風でもない。『トウキ…

もう一品、いただきます

至福感に満ちた『妄想少女オタク系』(2007年)の監督、堀禎一の劇場映画デビュー作『弁当屋の人妻――もう一品、私はいかがですか?』(2003年、劇場公開時のタイトルは『SEX配達人 おんな届けます』、アテネ・フランセで上映されたときのタイトルは『宙ぶら…

転回する「ウェスタン」 

クリント・イーストウッド『ブロンコ・ビリー』(1980年)がBS2で放映されていたので、録画して見なおす。あらためて思うのは、イーストウッドはこの傑作ロード・ムーヴィーを撮ることによって、『許されざる者』(1992年)よりも前に、西部劇の伝統に対す…

はもはもめけめけ 

増村保造と脚本家の白坂依志夫のコンビによる二本、『暖流』(1957年)と『最高殊勲夫人』(1959年)をラピュタ阿佐ヶ谷で。 『暖流』は、映画の舞台となる病院を正面からゆっくりトラックアップしていくショットで始まり、ほぼ同じ構図でトラックバックしな…

女の道

仕事と「活動」のあと、成瀬巳喜男『君と別れて』(1933年)と同『夜ごとの夢』(1933年)をアテネ・フランセ文化センターで。二本とも松竹蒲田時代のサイレント作品。これだけは見たいと思って数ヶ月前から手帳に予定を書き込んでいたので、団交が入らなく…

ドヤ街映画二本立て希望 

16日(金)、仕事と「活動」のあと、余り思いつめてもいけないし緊急に打つべき手はとりあえず打ったので、一週間ぶりに映画を見て英気を養おうと、アテネにフォードを見に行こうかとも思ったが、田中登『(秘)色情めす市場』(1974年)の冒頭で芹明香が口に…

芹明香先生はお元気らしい 

午前中はぐたぐだ、午後は家で「仕事」、夕刻からいそいそとラピュタ阿佐ヶ谷へ出かけ、沢田幸弘『濡れた荒野を走れ』(1973年)と曾根中生『わたしのSEX白書 絶頂度』(1976年)を見るという不払い労働。私の知っている日活ロマン・ポルノの作品群の中でも…

日活ロマン・ポルノな連休 

一昨日、ラピュタ阿佐ヶ谷で加藤彰『OL日記 濡れた札束』(1974年)と神代辰巳『濡れた欲情 特出し21人』(1974年)を見る。 『OL日記 濡れた札束』は、若い男に貢ぐために横領を続ける真面目なベテラン女性銀行員(中島葵)の、濡れ場におけるクローズ・ア…

切ってつなげてつなげて切って*1

先週の「パレルモ、パレルモ」に続いて一昨日は「フルムーン」、そして昨日はまたアテネ・フランセ文化センターのペドロ・コスタ特集(昨日の朝に来日したばかりのコスタ監督の講演付き)へ。ついでに予定を記しておくと、今日はシネマヴェーラで若松孝二『…

「君が傲慢なのは正しい」 

昨日26日、ペドロ・コスタ監督の『血』(1989年)と『溶岩の家』(1994年)をアテネ・フランセ文化センターで。平日の16:50からの上映にもかかわらずほぼ満席だった。いつも以上に若者が多かったのは春休みのせいか。とはいえ、コスタ監督の次のようなパン…

中村登『河口』

3.22シンポジウム無事終了。会場に足を運んでくださった方々、オーガナイザーのK先生、裏側からシンポを支えてくださった、S子さんをはじめとする日本女子大学のビューティーズのみなさん、どうもありがとうございました。それから報告者のみなさん、お…