自転車旅行主義  

金木犀の甘く切ない香りがどこからともなく窓辺に漂ってくる頃になるといつも、この季節を背景とする小津安二郎の映画、たとえば『彼岸花』、『秋日和』、『秋刀魚の味』といったフィルムをからだ全体で浴びたいという衝動に駆られるのだけれど、ちょうど今頃こうした作品が劇場にかかっていることは余りなくて、たいていはDVDで我慢することになってしまう。しかし今日みたいな秋日和に昼間から家に籠もってDVD鑑賞という気にもならず、自転車でちょっと遠出をすることに。
家の近くでまずパチリ。 

特に行き先など決めず出かけたのだが、いつのまにか早渕川にさしかかると、おうそうだこれは写真家中平卓馬ゆかりの川じゃないかと思い至り、この川沿いに上流に向かって失踪いや疾走する。

途中で誘われるようにして「せきれいのみち」という遊歩道に入る。

公園兼グラウンドみたいなところで野球をする少年たち。

いい気持ちで自転車を漕いでいたら本当に失踪してしまいそうだったので、来た道を戻る。

しばし休憩。

写真だとわからないけど、このおじさん、けっこうなスピードで走っている。

赤系統の色に飢えていた自分を発見。パチリ。

とちの木の葉っぱがいい具合に光を透かしていたのでパチリ。

自転車の速度に合わせて辺りに拡がってくる見慣れた風景も、見知らぬ土地から戻ってきた者の目には少しばかりよそよそしく見えるから不思議だ。スーパーで買い物をしてから帰ろう。