ジャッキー・ブラウン  

シネマヴェーラ渋谷の特集「グラインドハウス A GO GO!」で上映されていたクエンティン・タランティーノの『ジャッキー・ブラウン』(1997年)をぜひスクリーンで、と思っていたのに観逃してしまい、仕方なくDVDで。(写真はDVDではなくサントラCDのもの。) 
まだ老いぼれてはいないがもう若くはない、先は見えているが達観もできない、そんな普通の中年、このパスカル的存在、「反不惑」の停滞感を、タランティーノはナラティヴのかったるさとして提示する。「ここ」はろくでもない所だが、「国境」を越えて行くには荷物が多すぎる。ジャッキー(パム・グリア)の誘いに躊躇する保釈請負業者マックス(ロバート・フォスター)はそう呟いたかもしれない。一世一代の大勝負に勝った後でも、記憶の澱みは流れては行かないのだ。ならばせめて若かった頃の歌を歌おう。エンディングでパム・グリアが車を走らせながらボビー・ウーマックの「110番街交差点」を口ずさむとき、70年代の記憶の澱みは澱みとして輝き、澱みのまま「Jetztzeit」として充満している。
ジャッキー・ブラウン