3分の2は行方不明

hidexi2007-09-17


昨日16日、溝口健二監督のサイレント2本、『滝の白糸』(1933年)と『折鶴お千』(1935年)を新文芸座で。生の活弁付き上映で、弁士は『滝の白糸』が澤登翠、『折鶴お千』が桜井麻美。活動弁士の生の「熱演」付きで映画を観るというのは初めての体験で、とてもよかった。病み付きになりそう。

『滝の白糸』は、結果として人を殺し逃亡する滝の白糸(入江たか子)の追い詰め方が素晴らしい。隣の席の見知らぬ女の子も泣いていた。『折鶴お千』でヒロインのお千を演じる山田五十鈴は当時17歳だが、あの貫禄はいったい何なのだ。狂ったお千が病院で幻を見て剃刀を振り回すという鬼気迫るシーンがあるが、あの一瞬山田五十鈴は人間を超えていたのではないか。

改めてこの二本を観ると、ヴェネチア国際映画祭で賞をとった頃に出来上がった溝口作品のイメージは、溝口のフィルムの一面に過ぎないということを痛感する。溝口が監督した作品は90本あるが、そのうちの34本のフィルムしか現存していないそうだ。(左翼的)傾向映画『都会交響楽』や国策映画の『満蒙建国の黎明』、そして淀川長治が絶賛していた『狂恋の女師匠』や『日本橋』などのネガ・フィルムが、どこからかひょこっと出てこないものだろうか。