『ファスター・プッシーキャット キル!キル!』 

hidexi2007-11-28

今週は月、火と、東京フィルメックスのリティック・ゴトク監督特集@アテネ・フランセ文化センターに通っていた。一日の労働の後、上映時間が2時間を超えるフィルムを2本ずつ二日にわたって観るという過酷な体験によって最も犠牲にされたのが睡眠時間だ。好きでやっていることとはいえ、何を好き好んで?という矛盾した感慨を抱くもの睡眠不足のせいか。こうなってくると、超自我の命令に従っているとしか思えないのだが、従順な私は今日も命令に服して、労働を終えてからラス・メイヤー監督『ファスター・プッシーキャット キル!キル!』(1966年)@シネマヴェーラ渋谷へふらりと、寝不足の幽霊のように。

奥行きを感じさせないカリフォルニアの砂漠という表層を暴走する、内面なきゴーゴー・ガールズ(特に一番ワルい日系女優トゥラ・サターナ)がカッコイイ、といいたいところだが、もっと注目すべきは、これほど平板で枯渇したフィルムをサイケな音楽に乗せて勢いよく撮ってしまうラス・メイヤーの、遠近法を欠いた欲望の苛烈さではないだろうか。面白いのは、西部劇の舞台と同じ土地でヴァイオレンスが炸裂するのに、その暴力の内実が、背骨を折ったりナイフで刺したり車でひき殺すといったもので、拳銃がまったく使われていないところ。これも、映画史という奥行きからできるだけ無縁の平面でフィルムを成立させたいということなのだろうか。