『私たちの十年』 

昨日業務終了後に、第8回東京フィルメックスで、ジャ・ジャンクー賈樟柯)のドキュメンタリー作品『東』(2006年)と同監督の短編『私たちの十年』(2006年)を観る。
『東』については、上映中に不覚にも数回意識を失ってしまったので、何を言う資格もない。ただ、『長江哀歌』のサンミンおじさん(今度は青いブリーフ姿ですか)に再会できたことの喜びだけは記しておきたい。このフィルム、今回のフィルメックスで見逃したジャ・ジャンクーの『無用』とともに、また観る機会があるといいのだが。 
上映時間約10分の短編である『私たちの十年』は、最後に二人の女優が同じ言葉を口にする以外、台詞もナレーションもない。あざといともいえようが、ジャ・ジャンクー作品の常連チャオ・タオの沈黙の表情が相変わらずいいので、その台詞が口にされた瞬間、胸の淵に十年という時間が深く沈んでいくような気がした。
勝手な注文を一つだけつけると、列車内に夕日を射し込ませるなら、列車の進行方向を写し続けるカットにも(できれば逆光で)西日がほしかった。しかしこのカットを見ると、どうしてもワン・ビン鉄西区』を想起してしまう。ひたすら直進を続けるワン・ビンのカットに対して、ジャ・ジャンクーの場合は、列車がゆるやかに曲がるカットがあるところが違いといえば違いなのだけれど。