彼方からの言語
細見和之『ベンヤミン「言語一般および人間の言語について」を読む』を読む。ベンヤミンのこの「難解な」論考を徹底的にパラフレーズするという地味な本だが、今後ベンヤミンを学び論じる人々にとっての必読文献となりそうだ。単なる「解説本」にとどまることなく、著者の批評観(たとえば、芸術作品の「翻訳」として批評作品を捉えているところ)が、ベンヤミンの言葉とともに浮き彫りにされているところなどさすがである。また、ベンヤミンのこの「言語論」と、約5年後の「暴力批判論」とのつながりが(ほんのちょっとだけ)示唆されている点は、私としては特に興味深いところだ。「言語と暴力」というと、ヘイト・スピーチの問題などが連想されやすいのだろうが、ベンヤミンの場合はそうした「水平的関係性」においてではなく、「垂直的な」(神学的な)次元においてこそ言葉と暴力が関係する。内在的な近代批判(暴力批判)は、どうしても「絶対的なるもの」を要請する。また、そうしたものを要請せざるを得ないような危険な場所から発せられた言葉でなければ、近代批判など勉強家の「おしゃべり」にすぎない。本書のアクチュアリティを物語る最終章の「補論」は、息詰まるほど厳密な読解が続いてきた後だけに、とりわけ印象深い。
ベンヤミン「言語一般および人間の言語について」を読む―言葉と語りえぬもの
- 作者: 細見和之
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