『ドキュメント 路上』 

第20回東京国際映画祭の特集「映画が見た東京」で上映された一本、『ドキュメント 路上』(土本典昭監督、1964年)をル・シネマで。

シャープなモノクロの画面と、そこに介入する音楽・音響、そしてクールで自由な編集。この作品を観ていると、すぐれたドキュメンタリー・フィルムは紛れもない「創造」の産物であると実感する。
タクシー運転手が朝仕事に出かけるとき、木箱に配達された牛乳を、玄関先で妻と共に一気飲みするところをロングで捉えたショットは、「ドキュメンタリー」と「フィクション」という枠を超えて「映画」と呼ぶほかない特異な時空を、高度成長期真っ只中の東京という歴史的座標軸上に現出させる。撮影は、吉田喜重寺山修司のフィルムにも参加している鈴木達夫。素晴らしい。