『犬猫』

犬猫 [DVD]

犬猫 [DVD]

DVDで井口奈己監督の『犬猫』(2004年)。たぶんこれが3回目。劇場公開時は見逃した。

中国の写真学校に留学するアベちゃん(小池栄子)の家(昭和30年代に立てられた平屋の「文化住宅」っぽい家)に、ヨーコ(榎本加奈子)が住むことになった。そこに、ヨーコと幼なじみのスズ(藤田陽子)が、同棲中の古田(西島秀俊)のアパートを飛び出して転がり込んでくる。古田はヨーコの元彼だ。同居を始めたヨーコとスズとのあいだに微妙な空気が流れる。そして、ヨーコが密かに思いを寄せているバイト先の男(忍池修吾)とスズが仲良くなって、スズがその男を家に連れてくる…。

とまあ、こんな紹介を聞くとドロドロした話を予想するかもしれませんが、目に映る限りは全然そうではなく、不思議とまったりした映画です。100分にも及ぶ付録映像が面白い。付録映像を観ると、この独特の「まったり感」が、一見投げやりな、しかし実は緻密な、井口監督の演出方法によってもたらされていることがわかります。

東京郊外(武蔵野近辺)の空気、二人のヒロインのあいだを流れる空気、その二人を取り巻く人間関係の空気、フリーターであることの空気、1DKの文化住宅の空気、木や草や雨や雲や光や影によって生まれる空気。唯物的な意味で、これは「空気」を描いた映画です。