2012年 映画・極私的ベストテン 

毎年のことながら、特に新作映画はあまり見ていないので、以下私的なメモ程度のものです。 

新作映画(ほぼ見た順) 
『果てなき路』(モンテ・ヘルマン) 
『ル・アーヴルの靴みがき』(アキ・カウリスマキ
ダーク・シャドウ』(ティム・バートン
『愛の残像』(フィリップ・ガレル
『Virginia/ヴァージニア』(フランシス・フォード・コッポラ
『ライク・サムワン・イン・ラブ』(アッバス・キアロスタミ
アウトレイジ ビヨンド』(北野武) 
『スプリング・ブレイカーズ』(ハーモニー・コリン
『アルゴ』(ベン・アフレック) 
『ある相続人』(ジャン=マリー・ストローブ) 

【『戦火の馬』(スティーヴン・スピルバーグ)は昨年一番の催涙映画でしたが、DVDでしか見ていないのでベストテンからはずしました。】


旧作映画(ほぼ見た順) 
『港の日本娘』(清水宏
『閉ざされた谷』(ジャン=クロード・ルソー)
『鳥の歌』(アルベルト・セラ) 
ヴェネツィア時代の彼女の名前』(マルグリット・デュラス
『ラヴ・ストリームス』(ジョン・カサヴェテス) 
『イニスフリー』(ホセ・ルイス・ゲリン
『私は逃亡者』(アルベルト・カヴァルカンティ)
『白夜』(ロベール・ブレッソン
カリフォルニア・ドールズ』(ロバート・アルドリッチ) 
『クリムゾン・キモノ』(サミュエル・フラー

『トラック野郎 度胸一番星』(再掲)

『トラック野郎 度胸一番星』(鈴木則文、1977)をDVDで。このシリーズ第5作でも則文節炸裂!佐渡島にいるマドンナ(片平なぎさ)に会うために、佐渡に関する文献を集めてドライブインでにわか勉強する桃次郎(菅原文太)が読んでいる本の表紙がアップになるとそれは『サド侯爵夫人』て新鮮すぎる。千葉真一との(仁義ある)対決や、このシリーズの特に前半に共通するスカトロジーと不器用な恋との短絡など見所満載。それにしてもこれほど警察をおちょくった映画が松竹の『男はつらいよ』と並んで盆暮れのドル箱映画だったなんて隔世の感あり。いまの日本映画ってだいたい警察側から撮られてるのでは?この感情構造の変化は気になる。

トラック野郎 度胸一番星 [DVD]

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『トラック野郎 度胸一番星』

『トラック野郎 度胸一番星』(1977)をDVDで。このシリーズ第5作でも則文節炸裂!佐渡島にいるマドンナ(片平なぎさ)に会うために、佐渡に関する文献を集めてドライブインでにわか勉強する菅原文太が読んでいる本の表紙がアップになるとそれは『サド侯爵夫人』て新鮮すぎる。千葉真一との(仁義ある)対決や、このシリーズの特に前半に共通するスカトロジーと不器用な恋との短絡など見所満載。それにしてもこれほど警察をおちょくった映画が松竹の『男はつらいよ』と並んで盆暮れのドル箱映画だったなんて隔世の感あり。いまの日本映画ってだいたい警察側から撮られてるのでは?この感情構造の変化は気になる。

トラック野郎 度胸一番星 [DVD]

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あいラブ健さん

別のところに書いたものとほとんど同じですが、ちょっとだけ加筆してこちらにも。

昨日はオーディトリウム渋谷で「木村栄文レトロスペクティヴ」から3本。噂に違わずどれも面白かった。特に素晴らしかったのは『あいラブ優ちゃん』(1976)。「知的障がい」を持つ愛娘に注がれた木村の視線の愛の深さに感じ入る。人は一人で生きているのではないという当たり前の事実が、これほどの幸福感をもって語られうるとは。苦海浄土(1970)には、土本典昭監督の水俣病シリーズでおなじみの患者さんの姿も見える。石牟礼道子の原作にも出てくる、発病して入院しているあいだにいつの間にか離婚されていた当時55歳の女性の、からだがよくなったら土方でも女中でも何でもして生きていくという語りが切ない。病気が治る見込みはたぶんないのだ。自分たちが映っているフィルムを見る患者さんたちの生き生きとした表情。『阿賀の記憶』(佐藤真、2004)での同様のシーンをふと思い出す。『むかし男ありけり』1984)では、高倉健が小説家檀一雄の晩年をたどる。檀の愛人だった(らしい)北九州の料亭の女将に健さんがインタヴューするシーンで、三味線をひき終えた女将がしばらく沈黙した後、強い口調で「なにか言ってよぅ」と迫る。すると健さんがうつむきがちに、「今日はわたしが話しをしにきたんじゃなくて、あなたの話しを聞きにきたんですから」とドスのきいた声で早口で言い返す。まさに東映やくざ映画。ドキュメンタリーの中のフィクション性が露わになった瞬間に震えた。
http://a-shibuya.jp/archives/2491 

木村栄文レトロスペクティヴ@オーディトリウム渋谷

今日はオーディトリウム渋谷で「木村栄文レトロスペクティヴ」を3本。噂に違わずどれも面白かった。特に素晴らしかったのは『あいラブ優ちゃん』(1976)。「知的障がい」を持つ愛娘に注がれた木村の視線の愛の深さに感じ入る。人は一人で生きているのではないという当たり前の事実が、これほどの幸福感をもって語られうるとは。

『苦海浄土』(1970)には、土本典昭監督の水俣病シリーズでおなじみの患者さんの姿も見える。石牟礼道子の原作にも出てくる、発病して入院しているあいだにいつの間にか離婚されていた当時55歳の女性の、からだがよくなったら土方でも女中でも何でもして生きていくという語りが切ない。病気が治る見込みはたぶんないのだ。
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『むかし男ありけり』(1984)では、高倉健が小説家檀一雄の晩年をたどる。檀の愛人だった(らしい)北九州の料亭の女将に健さんがインタヴューするシーンで、三味線をひき終えた女将がしばらく沈黙した後、強い口調で「なにか言ってよぅ」と迫る。すると健さんがうつむきがちに、「今日はわたしが話しをしにきたんじゃなくて、あなたの話しを聞きにきたんですから」とドスのきいた声で早口で言い返す。まさに東映映画。ドキュメンタリーの中のフィクション性が露わになった瞬間に震えた。
http://a-shibuya.jp/archives/2491 

みらいを忘れない

『魔法少女を忘れない』(堀禎一、2011)をDVDで見て涙。「みらい」の記憶と忘却をめぐる、音と映像によるポップで幻想的でエロい省察。『妄想少女オタク系』や『憐 Ren』でもそうだったけれど、堀監督は自転車をどう撮るかということに賭けているような気がする。私としては、『弁当屋の人妻』の自転車のショットがもっとも鮮烈だったのですが。

魔法少女を忘れない [DVD]

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