幸せは誤配される

いつの間にかDVDスルーされていた『トゥー・ラバーズ』(ジェームズ・グレイ、2008)を見る。ありきたりの物語ではあるけれども(ドストエフスキーの『白夜』が基になっているとのこと)、これまでのグレイ作品における役柄とは一見打って変わった、とはいえ根は共通する、鬱を病むホアキン・フェニックスの繊細さが鈍く光る。舞台となるアパートの寒々とした屋上で、ホアキンとグウィネス・パルトローが逆光で向き合うショットの印象が強すぎて、ヴィネッサ・ショウとホアキンが抱き合うエンディングの暖かい室内に、凍てついた別の現実が侵入しているように思えた。年が明けてまだひと月も経っていないが、これが今年の新作(といっても2008年製作ですが)極私的ベストワンになるかもしれない。

トゥー・ラバーズ [DVD]

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