2011年新作映画・極私的ベスト5  

昨日30日に『サウダーヂ』を見て今年を締めようと思っていたら、その前夜に扁桃腺が腫れあがり熱もでてきて、こうなってしまったら医者から抗生物質を処方してもらわないと大変なことになるのですが、近くにある病院や町医者は年末でどこも休みで、市販薬を飲んで丸二日寝込んでいたところ症状は悪化する一方なので、藁をもつかむ思いで薬箱をひっくりかえしたら、3年前にもらった抗生物質クラビット」3錠を発見!さっそく1錠飲んだら少し良くなってきたのでこうしてブログを更新しています。

1.『De son appartment』(ジャン・クロード・ルソー、2007) 2.『エッセンシャル・キリング』(イエジー・スコリモフスキー、2010) 3.『東京公園』(青山真治、2011) 4.『ザ・ウォード 監禁病棟』(ジョン・カーペンター、2011) 5.『アンストッパブル』(トニー・スコット、2010)

『De son appartment』は新作ではないが、どうしてもここに入れておきたい。フレームの厳格さと音の純粋さが圧倒的。充実した孤独の力を感じさせられた。『エッセンシャル・キリング』では、逃げるという単調な行為が豊かな映画的連続を経て孤絶した神々しさへと至る。白(雪)、赤(血)のコントラストが目をひくなかに、突如として青(川を流れてくる青い布)が出現するところにとりわけ感じ入った。主人公のヴィンセント・ギャロが喉の渇きをいやすために、コートの下に乳飲み子を抱いて自転車を漕ぐ母親を襲い、その豊かな右の胸から乳を吸いながらも吐き出してしまうショットは、母性の拒絶などという前に、性と生と聖(左の乳房には赤ん坊が吸いついている)の三位一体をずらすアクションとして素晴らしい。『東京公園』は前にここで書いたように、例のキスのショットを思い出すだけで胸が痛む。IKEAでのエンディングの録音の見事さも特記しておきたい。『ザ・ウォード 監禁病棟』(写真)で、監禁病棟の娯楽室で患者である女の子たちが盛り上がりを欠いたままレコードをかけて踊るシーンがあるのだけれど、その白々とした時間は次に何かが起こる(実際に停電して雷鳴が轟く)ための準備の時間ではなく、アクションを可能にする、それ自体充実した潜在的な時間であるように思えて印象に残った。そうした時間をさりげなくフィルムに定着させているところがさすがに凄い。アンストッパブルは『大列車強盗』(エドウィン・ポーター、1903)以来の「汽車物」の系譜に連なるフィルム。降り注ぐ穀物というアイデアには虚を突かれた。事件のきっかけである大ミスをしでかしたハンバーガー食べすぎの太っちょ鉄道員が、事件解決後に「ファストフード店に転職」とあって、笑いながらも解雇だけで済むのかいと思わないでもなかった。 
『ファンタスティックMr. FOX』と『SUPER8/スーパーエイト』は、DVDでしか見ていないのではずした。話題の『無言歌』は、昨年の東京国際映画祭で『Ditch』というタイトルで上映されたとき見ているのだけれど、私はダメだった。年明けは風邪を治して『サウダーヂ』を見ることから始めたい。
それではみなさま、良いお年をお迎えください。