「晴れた日には誰か死ぬ気がする」 

昨日『ザ・タウン』ベン・アフレック、2010)をTOHOシネマズ六本木ヒルズで。

私にとってアメリカ映画の美点の一つと思えるのは、共同体から離脱した人間が生きていける山や森や川があたりまえのように存在しているところ。この映画の舞台であるボストンのチャールズタウンは、銀行強盗や現金輸送車強盗が裏の職業と化しているようなアイリッシュ系労働者階級の街で、強い絆で結ばれた仲間たちと強盗を繰り返すダグ(ベン・アフレック)は、強盗をきっかけに愛し合うようになった銀行支店長のクレア(レベッカ・ホール)とともに、生まれ育ったこの街から出て行こうとするのだが・・・。こうした意味で、『ザ・タウン』は正統派のアメリカ映画といえるだろう。ベン・アフレックの声や佇まいがどことなくクリント・イーストウッドに似ているような気もした。最後の銃撃戦で、太っちょが仲間を救うためにひとりワゴン車で決死の正面突破を試みるもFBIによる銃撃でハチの巣にされるところでは、『ガントレット』の同様の場面が頭をよぎった。ダグが正体を隠したままクレアとカフェで談笑しているところに、強盗仲間のジェム(ジェレミー・レナー)が割り込んでくる場面では、適確なカット割りのせいで本当に緊張させられた。この映画が遺作となってしまったピート・ポスルスウェイトの悪役顔もすばらしい。また、映画の冒頭に行われる銀行強盗で人質とされたクレアが、目隠しをされたまま波打ち際で解放され、彼女が目隠しをはずして空を見上げると大型旅客機が爆音を立てて通過するというショットがあるのだけれど、これが意味もなくよくて、こんなところにベン・アフレックの作家性が現れているのかもしれないと思った。