新キーワードは暴力

新刊本を二冊ご紹介します。
まずはこれ。

新キーワード辞典

新キーワード辞典

この画期的な「読む辞典」の狙いについては、「訳者あとがき」の以下の箇所で適確に語られています。

本書がめざすのは、(中略)レイモンド・ウィリアムズの『キーワード辞典』の精神にのっとって、さまざまな言葉、鍵語が、学問的な専門領域の中だけではなく、ひろく社会においていかに使用され、その意味がいかに変化しているかを記述することである。いや、それだけでは十分ではない。『キーワード辞典』の精神にのっとるとはつまり、私たちの使用する言葉の意味は変化してきたし、これからも変化する、それも、受動的に変化させられるだけではなく、私たちの、その言葉をめぐる闘争によって、能動的に変化させることができるという確信を、その記述のうちにこめることでもあるのだ。さらに言えば、キーワードの系譜と現在を記述することそれ自体が、言葉をめぐる闘争(もし闘争という言葉が大げさであるなら、そのプロセス)に対するアクションなのである。(645頁)

そして、訳者のみなさんがこうした「精神にのっとって」継続している「アクション」が、『Web英語青年』誌上(こちら)での連載「21世紀の生のためのキーワード――新しい批評のことば」です。ぜひ一読をお勧めします。

もう一冊は、10月に上梓されているので「新刊」とは言えないかもしれませんが、これ。

暴力 6つの斜めからの省察

暴力 6つの斜めからの省察

この本は、同じ著者の『大義を忘れるな』(青土社)と内容的にも重なっているので、読んでから何か書こうと思っていたのですが、そう思っているうちにここでの紹介が遅れてしまいました。Nさん、すみません。
「暴力」というと、「ベンヤミン」という名前をまず思い浮かべる人も少なくないだろう。そのベンヤミンと(旧西ドイツの)赤軍派との関係を論じた Irving Wohlfarth の論文 “Entsetzen” の英訳(Radical Philosophy 152号と153号に分載)が(さまざまな意味で)面白かったので、これと絡めてジジェク『暴力』について何か書くかもしれない、というようなことを言って実際に書いたためしはなかったような気がする。