転回する「ウェスタン」 

クリント・イーストウッド『ブロンコ・ビリー』(1980年)がBS2で放映されていたので、録画して見なおす。あらためて思うのは、イーストウッドはこの傑作ロード・ムーヴィーを撮ることによって、『許されざる者』(1992年)よりも前に、西部劇の伝統に対する自らの立ち位置を明確にしていたのだということ。この痛切な歴史意識は、(複数の)星条旗が継ぎ合わされてできたテント小屋を空撮で捉えたエンディング・ショットを経て、『父親たちの星条旗』(2006年)*1まで貫かれている。
 

転回するモダン イギリス戦間期の文化と文学

転回するモダン イギリス戦間期の文化と文学

ご恵贈いただく。どうもありがとうございました。
モダニズムでもなくモダニティでもなく「モダン」とタイトルに掲げた鋭い歴史意識は、イーストウッドに対抗しようという野心をはらむものなのかどうかは不明だが、きわめて貴重だと思う。イギリス文学関係の人だけでなく、広く「近代(の超克)」に興味を持つ方々にとっても刺激的な一冊。

*1:このタイトルの「星条旗」は原題では flags でやはり複数形。