生き延びるための絲山

絲山秋子『海の仙人』を電車の中で読んでいて、嗚咽しそうになるのを必死でこらえる。電車に乗っているときにかぎってこういう本を読んでしまう。『さようなら、ギャングたち』のときもそうだった。気持ちを落ち着かせようと頁から顔を上げ、口をへの字に曲げて泪を溜めたまま『アエラ』の中吊り広告に目をやると、「イケメン高校球児の夏」という記事のタイトル。なぜそれを見て泣くか、と対面の乗客に思われたらどうしよう、と思ったが遅かったようだ。

ところで『海の仙人』は、人に生き延びる力を与えてくれる、神聖な喜劇です。

海の仙人 (新潮文庫)

海の仙人 (新潮文庫)