中山徹『ジョイスの反美学―モダニズム批判としての「ユリシーズ 」』

中山さんの待望の著書が彩流社から出版されます。詳細はこちら。書店に並ぶのは2月25日とのこと。故あって原稿を読ませてもらいましたが、第一章がレイモンド・ウィリアムズ『文化と社会』の引用から始まっていてちょっとびっくり。著者の属する研究環境から…

『共通文化にむけて』

以下、ウラゲツ☆ブログ http://urag.exblog.jp からの転載です。 共通文化にむけて――文化研究 I レイモンド・ウィリアムズ著 川端康雄編訳 大貫隆史/河野真太郎/近藤康裕/田中裕介訳 みすず書房 2013年12月 本体5,800円 A5判上製360頁 ISBN978-4-622-0781…

『フクシマ以後』

このブログのアンテナにも入っていただいている、哲学者の田島正樹氏のブログ「アラビアータ」で、関曠野氏の新著『フクシマ以後』asin:4791766229に関する書評が読めます(こちら)。

『ほしのこえ』は別  

日本映画学会の会報に書評を書きました。こちらで読めますので、よろしかったらどうぞ。コテコテの学術書ではない、広い読者層が想定される本を学術的なメディアで書評する場合にはそれなりの戦略が必要で、今回は著者にかなり同一化、というか転移して書き…

新キーワードは暴力

新刊本を二冊ご紹介します。 まずはこれ。新キーワード辞典作者: トニー・ベネット,ローレンス・グロスバーグ,メギャン・モリス,河野真太郎,秦邦生,大貫隆史出版社/メーカー: ミネルヴァ書房発売日: 2011/01/20メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 21回この…

逃避 

今日、胸にプリントのあるTシャツの上にコーデュロイのシャツを着て、コートを羽織って買い物に出かけたところ、Tシャツの感触に違和感があるので、しまった、前後逆に着てしまった、と思ってあわてて確認すると、ちゃんと胸のところにプリントが見えた。ほ…

『身体性の幾何学〔エチカ〕』 

著者校のゲラの段階で読ませていただいたが、ようやく一冊の本になって何より。「ラディカル(過激かつ根源的)」という言葉がこれほどふさわしい本も少ない。ラディカルに「抽象的」な思考のすべてが、俳優としての著者の「経験」に裏打ちされている。まず…

「接吻療法」はさすがに・・・

ご恵贈いただきました。どうもありがとうございます。〈死の欲動〉と現代思想作者: トッド・デュフレーヌ,遠藤不比人出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2010/07/24メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 214回この商品を含むブログ (8件) を見るわかりやす…

モヒートばか 

昨日は、『カイエ・デュ・シネマ』誌出身のパスカル・ボニゼール監督作品ということで気になっていた『華麗なるアリバイ』を観るために炎暑のなかを渋谷へ。にしても暑い。Bunkamuraル・シネマにたどり着くまで干からびてしまいそうだったので、とりあえず涼…

ソドムとBI 

訳者の kark さんよりご恵贈いただきました。どうもありがとうございます。 ソドム―法哲学への銘 (暴力論叢書 5)作者: ルイサラ‐モランス,馬場智一,柿並良佑,渡名喜庸哲出版社/メーカー: 月曜社発売日: 2010/05/24メディア: 単行本 クリック: 26回この商品を…

「ざわざわ」から「さわさわ」へ

ご恵贈いただきました。どうもありがとうございます。『チャタレー夫人の恋人』と身体知―精読から生の動きの学びへ作者: 武藤浩史出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2010/05メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 21回この商品を含むブログ (5件) を見る第1章…

"Maradona Good, Pele Better, George Best"

ご恵贈いただきました。どうもありがとうございます。新書524ジョージ・ベストがいた (平凡社新書)作者: 川端康雄出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2010/05/14メディア: 新書購入: 1人 クリック: 19回この商品を含むブログ (7件) を見る中学生の頃、日曜日の…

絶望が足りない@豊橋 

24日(土)、同人誌『レイモンド・ウィリアムズ研究』第2号の企画で、関曠野さんへのインタヴューを行う@ホテル シーパレスリゾート豊橋。(インタヴューについては id:sintak さんと id:melaniek さんをご覧ください。右の写真は、インタヴューのあとホテ…

関曠野『ハムレットの方へ』の方へ 

メモです。 未来は過去のパロディとしてのみあり、新世界が無から出現することではない。変革とは過去からの脱出ではなく、過去がそれと知らず秘めていた喜ばしい可能性を開花させることにほかならない。(中略)体制の真の変革は、同時に各人の生き方の変容…

オレンジ本の書評  

4月4日(日)の東京新聞の書評欄で、批評家の佐々木敦氏がジジェク『大義を忘れるな』asin:4791764919 を紹介してくださっています。短い書評ですが、このぶ厚い本の苛烈な世界へと読者をいざなう文章です。いわく、「資本主義と馴れ合うことも、それと結…

『モダニズムの政治学』  

Raymond Williams, Politics of Modernism の邦訳が今月出版されていたとは。RW変換作業の参考にしよう。(右の写真は北川温泉の旅館の部屋から見た東伊豆の海。) モダニズムの政治学―新順応主義者たちへの対抗作者: レイモンド・ウィリアムズ,加藤洋介出版…

『大義を忘れるな』  

ご近所で紹介してもらいながら、自分で宣伝しないのもなんなので、自己宣伝です。 下の本を二人で訳しました。ホワイトデーのプレゼントに、お彼岸の供物に、ダンベルダイエットを始めたいがダンベルがないという方に、『パララックス・ヴュー』よりも安価な…

屈折  

エドワード・W・サイード『故国喪失についての省察 2』を、訳者のお一人である takashimura さんよりご恵贈いただく。どうもありがとうございました。 以下、お礼のメールに書いたことと重なるのだけれど、まずはとりあえず、第30章「抵抗すること、そして立…

で、どうする? 

id:shintak さんと id:malenie-ji-woo さんのところに報告・感想等があるように、昨日、同人誌の共同討議を行ってきた。録音した音声データを聞きながら改めて思うのだが、演出家のS さんとパフォーマーの H さんに参加していただいて本当によかった。この場…

彼方からの言語 

細見和之『ベンヤミン「言語一般および人間の言語について」を読む』を読む。ベンヤミンのこの「難解な」論考を徹底的にパラフレーズするという地味な本だが、今後ベンヤミンを学び論じる人々にとっての必読文献となりそうだ。単なる「解説本」にとどまるこ…

かなりナイーヴですが 

学会員以外は(もしかすると学会員すら?)読まないだろう或る学会誌に、↓の本の書評を書いた。この本は、ヴィクトリア時代の写真と文学をめぐる言説、両者の絡み合いを精査することによって、文学上のリアリズムという概念を定義し直そうとするもので、特に…

『来るべき精神分析のプログラム』

来るべき精神分析のプログラム (講談社選書メチエ)作者: 十川幸司出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/10/10メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 46回この商品を含むブログ (22件) を見るこの本、今年の3月末には書店の棚に並ぶと聞いていたが、忘れてい…

エクスクレメンティス・アルテリウス

不貞腐れていないで、少しは仕事を進めないといけないということで、秋のシンポジウムに備えてベンヤミン「ゲーテの『親和力』」(『ベンヤミン・コレクションI』所収)を読んでいたら、カント『道徳の形而上学』の「婚姻」をめぐる例の一節が引用されている…

転回する「ウェスタン」 

クリント・イーストウッド『ブロンコ・ビリー』(1980年)がBS2で放映されていたので、録画して見なおす。あらためて思うのは、イーストウッドはこの傑作ロード・ムーヴィーを撮ることによって、『許されざる者』(1992年)よりも前に、西部劇の伝統に対す…

生き延びるための絲山

絲山秋子『海の仙人』を電車の中で読んでいて、嗚咽しそうになるのを必死でこらえる。電車に乗っているときにかぎってこういう本を読んでしまう。『さようなら、ギャングたち』のときもそうだった。気持ちを落ち着かせようと頁から顔を上げ、口をへの字に曲…

絲山秋子『袋小路の男』 

片思いはいつ終わるものなのだろうか。片思いがいつまでも終わらないとすれば、その原因は、「思う側」と「思われる側」が作為的に結ぶ微妙な関係にあるのではなく、両者の意思とは無関係に形成され、いつのまにかそこを離れては生きていけなくなっている場…

梅雨明けの超越論的経験論

乗客のまばらな、冷房の効きすぎたバスが、昼下がりの交差点でエンジンをとめる。車窓から外を眺めると、夏の陽射しに嬲られるがままに、樹木が音もなく風に揺れながら光と影を街路に投げ散らかしている。ガラス窓の向こうに揺らめくこの光景は、〈美的理念…

明るい敗北 

訳者の長原氏の編集による日本語オリジナル版、スラヴォイ・ジジェク『ロベスピエール/毛沢東 革命とテロル』(長原豊、松本潤一郎訳)を読む。特に第2章「バディウ―世界の論理」に刺激を受ける、というか理論的かつ私的に励まされた。この章でジジェクは、…

失業とは不払い労働で、労働とは有給の失業だ。 

真実は、真なるものを考えるように強制するものとの偶然の出会いから見出されなければなんでもない、みたいなことをドゥルーズが書いていて、ああこのフランスの哲学者の中にはやはりモラリストの伝統が息づいているんだなぁと思いながらそれを読んだのは学…

はまぞう君よりも早く 

情報の速さがとりえ、というわけではまったくない私ですが、はまぞう君よりも(そして僭越ながら訳者さんたちよりも)一足お先に近刊情報を。 文化と抵抗 エドワード・W・サイード 著 デーヴィッド・バーサミアン 著 大橋 洋一 翻訳 河野 真太郎 翻訳 大貫 …